ぴぴぴぴよよ

大学院生です。

【日記】わかりやすさと誠実さの狭間で

こんにちは、今日は純粋な日記になります。

 

かれこれ4年間、個別指導塾で英語を教えています。中学生の頃、美しく整理された英語文法に感動して以来、リスニングもスピーキングもかなぐり捨てて英文法を勉強してきたので、英文法・英語リーディングには自信があります。(スピーキング、リスニングはてんでダメです。)

 

今日は分詞の単元の授業をしてきました。今日は分詞の単元で

” Look at that sleeping baby. (あの寝ている赤ちゃんを見てください。)”

という文章の sleeping について考えました。sleeping は動詞sleepが変形した形ですが、babyに修飾する形容詞であり、that sleeping baby は品詞的に that beautiful picture と同じ構造を持っていると言えます。(どちらも指示代名詞-形容詞-名詞の構造)

中高生は、以下2つの点でこのsleepingの解釈に戸惑います。
①動詞であったはずのsleepingが、beautifulと同じはたらき(形容詞)であるということ。

②sleepingが分詞とも形容詞とも呼ばれていること。(sleepingは”形容詞として機能する分詞”なので間違いではないですが、分詞なの?形容詞なの?どっちもってどういうこと?と思ってしまうようです。)

 

この手の混乱を解決するため、僕は「寝ている赤ちゃん」という日本語文を引き合いに出して、こう説明しています。

「”寝ている赤ちゃん”の 寝ている は動詞の連体形だよね。連体は体言(名詞)に連なるということだから、日本語動詞の連体形は、名詞を修飾する英語形容詞のはたらきと同じなんだ。”寝ている(動詞の連体形)”も"sleeping(現在分詞)"も、動詞が変形して出来たという点で一緒だよね。そして、動詞が連体形の形を取っていることと、分詞が形容詞のはたらきをしていることも対応して理解できるかな。」

文法用語が多いので一字一句文章にすると難解ですが、

①動詞の形容詞化に近いことは日本語でも起きている

②「分詞」と「形容詞」は「動詞」と「連体形」くらい違う

ということを説明しています。
だいたいこれで納得してくれるので、その後の副詞として機能する分詞や、形容詞句/副詞句の理解もスムーズになります。

 

この説明がわかりやすいかどうかは、生徒の学力やバックグラウンド、理解の特性に依るので気にしてはいません。わかりやすいといいな、程度です。

気になるのは、この説明は不正確ではないか、という点です。英語は屈折語(語が分解できない形に変化する言語:sleep→slept など)なのに対して、日本語は膠着語(語と語が組み合わさって意味を作る言語:寝る+た→寝た など)であり、動詞の扱いが大きく異なるため、英語動詞の分詞化と日本語動詞が連体形をとることは対照的でないような気がしています。
それと、「分詞-形容詞」の関係と「(日本語)動詞-連体形」の関係が近いというのが正確だとして、この説明では英語動詞や名詞のように、品詞がそのまま語の分類になっているものを連想すると余計わかりにくくなります。「分詞-形容詞」「(日本語)動詞-連体形」のような「語の呼び名-語の役割」の関係は、「名詞-名詞(名詞という語が名詞という役割を担っている)」「(英語)動詞-(英語)動詞(英語において、動詞という語は動詞という役割を担っている)」の関係とも近いのです。

 

結局、進路選択の自由度をできるだけ上げてあげたいという思いで塾講師をしているわけなので、多少不正確でもそれで点数が取れれば良いやという態度でやっています。でも、学問に対して非常に失礼な態度を取っていると思い、時々後ろめたい気持ちになります。

 

塾の研修は、生徒の褒め方とか宿題の出し方とかやってないで、教科ごと、単元ごとの具体レベルで指導のナレッジを共有してほしいなあ、なんて思ったりもします。集団じゃなくて個別指導だからナレッジがナレッジにならない、というほど個性的な生徒はまだ見ていない気がする。

 

 

屈折語膠着語の説明は本題でないので、関心がある方はより丁寧な説明を調べてみてください(予防線)。