ぴぴぴぴよよ

大学院生です。

【研究紹介】日本は温暖化しているのか

皆さんこんにちは。今年は6月下旬から酷い暑さでしたね。まだ梅雨なのに、40℃を超えた地域もあったそうです。

 

今日は僕の研究分野である、気候変動と農業被害について触れたいと思います。そもそも気候変動は発生しているのでしょうか。気候変動のひとつである、温暖化について考えてみます。

 

単純に年平均気温を比較して、(例えば)1976年と2020年とを比較して、今の方が気温が高くなっていると主張することもできます。しかし、もし冬が温暖化して夏が寒冷化していた場合に変化なしと判断されてしまいます。月間平均気温にしても同様のことが言えます。月初に温暖化して月末に変化がなかった場合や、たまたま平年より雨が多かった場合など、年平均気温や月平均気温で考えると正確な評価ができない場合があります。平均気温が上がっているとして、暑い日の数が増えているのか、暑い日が極端に暑くなっているのか、判断できません。人間にとっては些細な違いかもしれませんが、作物にとっては大きな違いです。

そこで登場するのがハザード曲線です。これは「ある自然現象の強度とその発生確率」を表す曲線グラフです。一般に、強度の高い現象(超高温、大洪水、大地震など)は発生確率が低く、強度の低い現象にはその反対のことが言えるため、右肩下がりの曲線になります。従来は地震や火山の噴火に適用されていたモデルですが、最近になって気象にも適用されるようになりました。これを温暖化に当てはめて、高気温になる確率が高くなっている場合に温暖化していると言えそうです。

 

それでは、この考え方を用いて、

稚内アメダス(地域気象観測システム)とつくばアメダスのデータから

②8月の日平均気温を用いて

③8月n日の平均気温がX℃を超える確率Y

を表すハザード曲線を、1976-2007年と1990-2020年について描いてみます。

(厳密には、雨で涼しい日を考慮して前5日間の平均気温を扱います。他と比べて極端に気温が低い日があると、比較結果がおかしくなるからです。)

下のグラフを見てください。これは、稚内アメダス(地域気象観測システム)のデータから、8月n日の日平均気温がX℃を超える確率Yについて表しています。必ず起こる現象の発生確率は1なので、稚内の8月はほぼ確実に6℃を超えると言えそうです。

青いグラフ(1990-2020のデータから作成)とオレンジのグラフ(1976-2007)を比較してみると、9-11℃を超える確率が高くなっていることがわかります。一方、12-14℃を超える確率はそれほど変化していません。

1976-2007/1990-2020の稚内ハザード曲線

次に下のグラフを見てください。これはつくばのアメダスのデータを用いて、同じ方法で作ったものです。当然稚内よりは暑いですが、青とオレンジのグラフに大きな差が見られません。(少なくともこの方法では)つくばのアメダスが観測する範囲において、ここ40年で温暖化は起きていないと言えそうです。

1976-2007/1990-2020のつくばハザード曲線

 

さて、この分析から地球温暖化がある/ないと言い切ることはできません。いろいろ理由はありますが、やはりアメダスの観測拠点1つ分ではデータ不足でしょう。また、観測所の標高について考慮できていません。標高が違えば気象条件も違うので、純粋な気温のみの比較にはなっていません。ただ、温暖化の影響が地域によって異なるということは言えそうです。今回の結果と衝突しますが、一般に北海道では、本州に比べて温暖化の進度が遅いことが指摘されています。もう少し色々な観測所について調べてみたらわかることが増えそうです。

ここで強調したいのは、ハザード曲線で考えると、少なくとも稚内においては「中程度の気温を超える確率が上がる現象」が起きているということです。温暖化の解像度が上がりましたね!ちなみに、全国の観測所で同じ分析をしても、ほとんどの地域でこの現象が見られます。

 

今回はこのあたりで終わりにします。今日お伝えしたかったのは

①ハザード曲線で温暖化の解像度を上げよう

②温暖化の影響は地域によって異なり、北海道は本州に比べて進度が遅い

の2つでした!皆さんも身の回りの出来事についてハザード曲線を作ってみてください。